地盤注入の注入形態として割裂、割裂浸透、浸透の3形態があり、粘性土には、いかなる注入材、注入方法を用いても割裂以外になり得ないことは周知である。
また、砂質土に対する浸透は、人為的にコントロールし得るわずかな可能な要素であるゲルタイムと注入速度に大きく左右され、注入速度を大きくするに従って浸透→割裂浸透→割裂と注入形態が移行していくこともわかっている。
そこで、浸透のみを重視すれば、とくに細粒砂の場合などでは経済性を無視した非常に低い注入速度での作業を強いられることになる。
ところが、多くの場合砂質土は割裂浸透によっても比較的良好な改良効果が得られるため、経済性との兼ね合いで、割裂浸透によって効果と経済性の両立を図っているのが実情である。
ところで受入れる側の地盤の注入抵抗は、地盤が元来持っている透水性に支配され、その分布が不均一であるほど逸脱しやすい状態にあるといえる。
このような地盤中のある一定の透水性に対して注入速度が過大であれば無理が生じ逸脱傾向は増長されることになる。
逆に注入速度が小さくなるに従って逸脱傾向は抑制されるが、注入速度と経済性は常に相反する関係にあって、過小な注入速度は経済性を損ない無駄につながる。
経済性を損なわずして逸脱を最小限に留めるための適切な注入速度(限界注入速度)を注入ステップ毎に前もって設定できればよいが、残念ながらその方法はいまだ確立されていない。
最近、透水性地盤への注入形態(浸透か割裂か)が注入速度によって左右されることを利用して、注入に先立って行う水注入によるQcr試験なる方法が理論的に提唱され、あらかじめ適正な注入速度を決定する参考にされようとしているが、有効なパッカーが形成されていない状態で行っても無意味である上、水と薬液では条件がかなり異なることから、Qcr試験はまだ実験室レベルの域を脱していない段階であり、更にこれを土質条件や土被り条件の異なる各注入ステップ毎に行うことは莫大な時間と費用を要し、とても現実的とはいえない。
従来、施工中に有効な注入が行われているかどうかを判断する唯一のバロメーターとして注入圧力の動向に頼っており、一般的には注入圧力が上昇傾向を示せば有効な注入が行われていると考えられていた。
しかし、実際には吐出部にゲルが付着肥大し次第に流路が狭まっていくことに起因する圧力上昇が、有効な注入が行われているかどうかを判断するための微妙な圧力変動を打ち消してしまうことが多く、「二重管ロッド複合注入工法」で通常用いられる吐出部を絞ったタイプのモニターでは特にこの傾向が顕著で、単に注入圧力の上昇傾向だけで注入の有効性を判断することは難しい状態にあった。(図−7)

この問題を解決する方法を模索している過程で次のことが判明してきた。 割裂力>拘束力の場合地盤変位があり、割裂力<拘束力の場合地盤変位はないことということが分かり、施工中に有効な注入が行われているかどうかを判断するバロメーターとして十分利用可能である。
適正な注入速度を見出だす方法としても、微細な地盤変位から割裂か浸透かを判断する方法がQcr試験による方法よりむしろ現実的であることが分かった。
拘束力はその注入ステップにおける注入ゾーンを取り巻き拘束しているゾーンの透水性、土被り厚さ、内部摩擦力、粘着力、密度などの地盤固有の要素によってほぼ決まるが、割裂力はその注入ステップにおける注入材のゲルタイム及び注入速度の要素を人為的に変えることによって調節できる。
注入中の微細な地盤変位を観測し、それに対応して現在施工中の注入ステップでの注入コントロールを変化させることによって積極的に割裂、割裂浸透、浸透の注入形態を選択することが可能になる。
注入速度を下げるほど割裂力が小さくなり、よりスムーズに土粒子間への浸透が図れることになるが、過少な注入速度は経済性を損ねることは前にものべたとおりである。
また、注入速度を上げるほど割裂力は大きくなり、割裂力が拘束力を越えると拘束地盤を変形させて有害な変状につながると同時に改良ムラが生じやすくなるから、割裂力が拘束力を超えない範囲で注入速度を上げて経済性を向上させるべきである。
地盤変位で受け入れ状態を判断しながら注入作業をコントロールすることは、現在施工中のステップゾーンを取り巻く土質状況を常に把握しながらの作業でもある。 その結果、各注入ステップ毎の限界注入速度や瞬結グラウトから緩結グラウトに切り換えるタイミングが合理的に決められることになり、相反する面をもった注入効果と経済性の問題の両立が図れることになる。
地盤変位で受け入れ状態を判断しながら注入作業をコントロールすることによって、「二重管ロッド複合注入工法」に残された課題であった瞬結グラウトから緩結グラウトへの合理的な切り換え時期及び合理的な使用比率、また合理的な注入速度についての具体的な対処技術が浮き彫りになってきた。
SCR注入工法は、以上述べたように地盤変位センサーによって計測される微小な地盤変位を注入圧力の動向に優先させて管理し、これに対応してSCR注入システムを連動させ、各注入ステップ毎に最も合理的な注入コントロールを行うことを基本とし、地盤注入における無理、無駄、ムラを最小限に留めることによって地盤注入における改良効果並びに注入効率の飛躍的な向上を目指すものである。
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