9.SCR注入工法の標準注入率

 注入量を求めるための注入率は経済性の上で重要であるとともに、改良効果を左右する点で最も重要なファクターであることは周知である。
 砂質土に対する注入率は(λ)=ρ・α[ρ:地盤の間隙率(%)、α:充填率(%)]で表される。
 最近、充填率は重要度(期待する注入効果の信頼度)に応じてα=90〜120%程度の設定が提唱されているにも拘らず一般的に下表−1が採用されることが多い。
 また、土質と注入形態の関係図で「注入工法不要の土質」とされるN値3以上の粘性土に対しても同様に下表−1が一般的に採用されることも矛盾する。

注入率表−1
土 質 N 値 間隙率
ρ (%)
溶 液 型 懸 濁 型
注入填充率
α (%)
注入率
(%)
注入填充率
α (%)
注入率
(%)
粘性土 緩い 0〜4 70 55 38.5 50 35.0
中位 4〜8 60 50 30.0 45 27.0
締まった 8〜15 50 30 15.0 25 12.5
砂質土 緩い 0〜10 50 80 40.0 70 35.0
中位 10〜30 40 80 32.0 70 28.0
締まった 30以上 30 70 21.0 60 18.0
砂 礫 緩い 10〜30 50 80 40.0 70 35.0
中位 30〜50 35 80 28.0 70 24.5
締まった 50以上 25 80 20.0 70 17.5

備考
 1.N値は参考値であり、注入率の決定にあたっては原則として間隙率から求める。
 2.本表の間隙率は標準値であるので、土質調査の結果別途定めるものとする。
   その場合の填充率は比例配分とする。
 3.腐植土、埋土については別途考慮する。


土質と注入形態の関係図

 従来、設計時点では推定柱状図に基づき、土層別に注入率を変えて注入量を計算しても、実施時点では加重平均して各ステップに均等分割して施工することが多い。
 このような不合理が一般的に行われていることは注入率が改良効果を左右する最も重要なファクターであるということと矛盾する。
 特に止水を目的とする場合は、連続性を確保するために土層に応じた注入量を確実に地盤中にセットすることが大切であり、加圧脱水現象による注入充填率の増加も考慮にいれて設定することが望ましく、地盤注入において再考されるべき問題といえる。
 また、注入率の設定に当たっては、土被りを考慮することも本来重要な要素である。
 比較的浅い深度の粘性土に対して、現実に注入率表−1に示される注入率に基づく注入を行うとすれば、実績的に大きな地盤隆起を伴うことは必至で、とても無理であり、無駄である。
 注入率の設定に際しては重要度(期待する注入効果の信頼度)によって注入充填率を決めることも大切である。
 ここで重要度に対する考え方を注入後の地盤の形態(図−2)に従って説明する。
 この図は注入管から離れるにしたがって改良ムラが生じやすくなることと、その度合いは注入率とも深く関係することを示し、地盤注入特有の「型枠のない」地盤中に形成される改良地盤の形態をよく表している。

注入後の地盤の形態(図−2)
(a) (b) (c) (d) (e)
割裂脈状 部分的浸透 浸透が連続
しない
一部に改良
ムラが見られる
改良ムラが
無く連続している

 砂質土で構成される地盤に対して、完全止水を目的とする場合は注入形態はeを目標とすべきで、この場合重要度:大と考える必要がある。
 完全止水を目的とする必要がなく、部分的に浸透ムラが生じても目的が達成されると判断される場合は注入形態はd程度でも許容され、この場合重要度:中と考えればよい。
 注入形態c程度の改良でも許容される場合は、重要度:小、或いは小以下でもよい。
 粘性土を混在して挟む砂質地盤等で、砂質部分だけに浸透がなされることで目的が達成されると判断される場合は注入形態はbの形態となり、この場合粘性土と砂質土の割合を考慮して主に砂質部分に対する重要度で設定すればよいことになる。
 粘性土には注入形態はa以外に有り得ず、重要度の設定に際しては、注入率は拘束力によって変化することを考慮した上で必要に応じて人為的に設定する。
 以上のことを考慮して、SCR注入工法における標準注入率の設定に当たっては、次の表に基づいて行う。

SCR注入工法の注入率表

 注入率は、透水係数,間隙率等の土質条件により定まるが、重要度に応じて次表を標準とする。また、粘性土は深度に応じて更に補正を行う。

SCR注入工法の注入率表
土質 相対密度
コンシステンシー
N値
間隙率
ρ (%)
注入充填率
α (%)
注入率
λ (%)
重要度 重要度
粘性土 やわらかい 0〜4 70 50 40 30 35 28 21
中位 4〜8 60 40 30 24 24 18 12
締まった 8〜15 50 30 20 10 15 10 5
砂質土 やわらかい 0〜10 50 120 100 90 60 50 45
中位 10〜30 40 120 100 90 48 40 36
締まった 30以上 30 120 100 90 36 30 27
砂 礫 やわらかい 10〜30 50 120 100 90 60 50 45
中位 30〜50 35 120 100 90 42 35 31.5
締まった 50以上 25 120 100 90 30 25 22.5

備考
 1.N値は参考値であり注入率の決定に当たっては原則として間隙率から求める。
 2.本表の間隙率(ρ)は標準値であるので、土質調査の結果別途定めるものとする。
   なお、その場合の注入充填率は比例配分とする。
 3.腐植土,埋土については、別途考慮する。


 注入率が過小な場合は改良ムラが生じ易くなることに留意が必要
 過大な場合はSCRコントロールによって途中で注入は打ち切られる
 


粘性土の深度別補正係数
上表の注入率に左表の補正係数を乗じる。
深度 1〜3m 3〜5m 5m以上
補正係数 0.5〜0.6 0.6〜0.8 0.9〜1.0

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